今年10月。宮城県女川町で地域通貨導入プロジェクトが開始した。震災の甚大な被害に加え30%を越える高齢化率の同町。
今後ますます必要となる住民同士の支えあいの活動を、地域通貨という新たな仕組みで促す。その狙いと現状を追った。
行政、商工会、NPOの恊働プロジェクト
「地域通貨」と聞いて何をイメージするだろうか。国内でも震災前から様々な地域で導入されているが、「もらって使ってみたけど、いつの間にか見なくなった」「もらったはいいけど、どこで使えるかわからなかった」というような印象を持っている人もいるのではないか。
地域通貨を「お金の代わり」として捉えた場合、それは使える地域が限定されただけのお金となる。地域通貨は、消費者に配布され使われた後、小売り側が現金に換金したら終わってしまう。経済活動の活性化を促すという面で見たとき、地域通貨は流通量や利用地域の限定性という課題を抱えていることが多い。
石巻市街地から東へ15キロメートル、牡鹿半島の根元にあり女川湾を臨む宮城県女川町。人口約8200人のうち高齢化率32・1パーセントというこの町で、地域通貨「アトム通貨」が導入された。9月からテスト導入を開始し、10月から本格スタート。町内56の、ほぼ全ての店舗で使うことができる。10月時点で約53万円分の地域通貨が流通している。
中心となったのは、女川町商工会。取り組みに共感し、高齢社会の地域コミュニティづくりに取り組む一般社団法人高齢先進国モデル構想会議が、その実現に支援を申し出た。「つながっペ支えあい隊」を設立して、運営支援を開始した。
また、行政から女川町健康福祉課、女川町で活動するNPOカタリバなどがプロジェクトに加わった。「お金の代わり」ではなく、「地域のコミュニティ形成の潤滑油」としての機能を求めたというこのプロジェクト。運営を支援するつながっぺ支えあい隊の塩澤さんによると、地域通貨を導入する狙いは、3つあると言う。
狙い1:住民同士が支え合うきっかけを作り、継続させる
被災した地域が復興するため、さらに言えば高齢化する地域が持続的に成立していくためには、地域住民同士の支えあいが欠かせない。地域コミュニティが機能している必要がある。
女川町では、これまでも地元の行政をはじめ、商店街、NPO団体など、地域内で様々な支えあいの活動が行われてきた。結果、仮設住宅の充足やガレキの集約処理、復興商店街の開業、漁港の再開、行政による住民の包括的な健康管理などの成果が得られた。
地域通貨は、こうした地域を「支えたい」「役に立ちたい」という思いによる活動が今後も継続的に行われること、そしてそれぞれの活動が相互作用することを目指して導入された。
今後、外部からの寄付の減少や支援団体の活動停止などが予測されるなか、地域の支えあいの活動が単発に終わらず、継続することが求められる。今回の地域通貨には、こういった継続性をつなぐ「社会福祉ツール」としての役割が期待されている。
ノルウェーのベルゲン大学にて日本語と文化を教えております。日本の地域通貨について研究をしておりますが、地域により、商品券などと交換できるポイントと、実際に行動を通しての奉仕活動のみと交換できるポイントがあるようですね。奉仕活動を通してのポイントですと、お互いに親しくなれたり、精神的にもやる気が高まるような気がします。また、健康で時間の都合のつきやすい人だけでなく、高齢者や障害者始めあらゆる人がお互いに支え合うシステムですと、長続きするのではないでしょうか。障害があっても何かできることがあるという精神的な支えは誰にとっても重要だと思います。