広がる古民家再生プロジェクト

石巻市、尾ノ崎の古民家にて家の所有者から ボランティアへ、家の歴史について説明が

石巻市、尾ノ崎の古民家にて家の所有者から ボランティアへ、家の歴史について説明が

古くなった民家を改装し、地域コミュニティを活性化させる場として活用する動きが広がっている。

岩手県大槌町。一般社団法人おらが大槌夢広場の臂(ひじ)徹さんは、「震災以前から、就農者の減少や都市部への移転などによって空き家が生じている。ボランティアの宿泊施設や、仮設住宅を出た後に地元の人が住む場所に転換したい」と話す。ボランティアの力を借りて現在までに2棟の古民家の修繕・改装を行っている。今後は活用希望者とのマッチングを計画しており、学生のコンペなども試験的に実施する予定だ。

宮城県石巻市の尾ノ崎地区。北上川沿い、大川小学校の下流に位置するこの地区では、築100年を越える古民家なども数多く津波被害にあった。古民家の修繕に取り組む株式会社ジャパンヘリテイジの田邉寛誠さんは、古民家を防災や安全、命について考えるための学びの場として活用したいと話す。災害危険区域に位置するため宿泊施設にできない等、今後の活用法も行政の方針に左右されるが、それでも地域の思い出が刻まれた古民家を活用したいと検討を進めている。すでにのべ100人超のボランティアの手を介し、修繕が完了する日も近い。

広島県尾道市、「尾道空き家バンク」 一日相談会の様子

広島県尾道市、「尾道空き家バンク」 一日相談会の様子

東北以外でも、古い空き家を再生して利活用する例は多い。広島県尾道市はNPO法人尾道空き家再生プロジェクトに委託し「尾道市空き家バンク」という事業を行っている。市が指定した高齢化と廃屋化がすすむ特別区域に、新たな移住者の呼び込みを狙い、家を貸したい所有者と移住希望者をマッチングしている。

 

移住希望者は相談会に参加した後、インターネットを使って物件を探せる仕組み。「顔の見える関係」と「利便性」が安心感と納得感につながっている。プロジェクトには建築家などの専門家が関わっており、家のリノベーションについての相談も可能だ。家の所有者、移住希望者双方へのきめ細やかなサポートが奏功し、12年11月現在、95件の空き家が登録され、うち60件以上が契約済となった。

共通するのは、空き家を変化や新たな出会いを呼び込むツールとしてとらえ直していることだ。古民家の価値は、建造物としてだけではない。古くから刻まれてきたストーリーと、地域に根付いた人間の営みがしみ込んでいる。その価値を掘り起こすことで、新たな営みが生まれる場となるのだろう。

文/瀬名波雅子

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