インタビュー先:青柳 光昌さん
日本財団 公益・ボランティア支援グループ 東日本大震災復興支援チームリーダー
「人への投資」を通じて、都市と地方の関係を変えていきたい
Q.今後の支援の方向性は
軸は2つ。まずは今必要な支援ということで産業面、特に漁業と水産加工業への支援です。震災直後の漁業者への無利息融資に加え、水産加工施設の整備などを行ってきました。産業の復興は雇用を生み、経済がまわることはストレートに町の活気に影響します。
もう1つは将来を見据えた、人への投資です。中長期的に復興を支える地域人材の育成を行うもので、今後プロジェクト数を増やしていきます。
Q.人への投資の具体的内容は
例えば石巻では、フィリップモリス社と共に、高校生向けのキャリア教育を行っています。またダイムラー社とは、グロービス経営大学院仙台校への奨学金プログラムを行っており、復興と社会変革に取り組む地元人材へビジネススキル習得機会を提供しています。
少し大袈裟ですが、人への投資を通じて、これまでの中央、都市と地方の関係性を変えていきたいと思っています。地域が人やリソースを中央へ送りその恩恵を返してもらう形から、各地域が自立し、したたかに中央のリソースを使って行くような社会へ。そのためにも、優秀な人材が地域からより多く生まれる必要があるのです。
Q.時間の経過に伴い企業等のドナーにどのような変化が見えますか
まず、各社で明確なテーマを持った支援へ移行しつつあります。また復興に使えるCSR予算が限られてくる中、資金の拠出だけでなく、例えば流通ネットワークといったような本業に関連したリソースを活用した支援という意識も高まっています。
日本財団では昨年設立50周年を迎え、自らのミッションを「ソーシャルイノベーションハブ」と定めました。現場を知っているからこその企画力や実行力を発揮し、企業と現場双方のニーズに応えながら社会変革を実現していきたいです。
Q.現場側のNPO等は今後何が必要に?
さまざまなリソースが減少していく中、プレイヤーは厳選されてきています。一方現場へのニーズはそこまで減っておらず、活動を下支えする人材確保やリーダーのマネジメント力の育成など、各プレイヤーのキャパシティビルディングの重要性が高まっています。
また今後も資金を集め続けるためにも、事業評価の強化が求められます。定性的成果の可視化は難しいですが、評価や説明責任を果たすための努力を怠ってはいけません。例えば日本財団は被災母子支援のサロン事業を推進していますが、「母子ともに心身健康になる」という目標を具体的な指標に落とし込む作業を委託先NPOと共にしています。事業推進プロセスを通じて、成長の機会を提供できればと考えています。
【日本財団 青柳 光昌氏 プロフィール】
日本財団の復興支援チーム責任者。震災直後より日本財団の「ROADプロジェクト」に携わり、数々の企業・NPOと連携して支援事業を推進している。