丁寧なマッチングと生活困窮者支援ノウハウで成果
宮城県の有効求人倍率は昨年11月時点で1・12倍。震災前の2倍近くの高い水準を保っている。一方で働きたくても就職先を見つけることが困難な層は依然として存在し、その解消が課題となっている。一般社団法人パーソナルサポートセンター(以下、PSC)は、仙台市と協働で、仙台市内に住む被災者、生活困窮者への就労支援を行っている。昨年6月に開始した事業は今年1月10日現在で、相談者165名、就職決定者57名という成果を上げた(就職率34・5%)。その多くは、高齢者や障害者、就労経験が乏しい人など、一般的に就職のハードルが高いとされる人たちだ。
PSCが行う就労支援の特徴のひとつは、求職者と企業との丁寧なマッチングにある。まず求職者担当が求職者の要望や就労能力を見極め、ふさわしい就労の場を一緒に考える。企業開拓担当は、求人誌やハローワークの求人情報をもとに企業ニーズを丁寧に調べる。最新の情報だけではなく、数ヶ月前の求人情報を掘り起こして、電話や直接訪問も行い、利用者が働き続けられる職場か、時間をかけて確認している。
昨年12月からは職業体験実習も開始した。実習生一人を受け入れると、企業には1日3千円の運営費が支払われ、実習生には、期間に応じて最大10万円が奨励金として支給される。求職者が現金収入を得る機会をつくり、働くペースに慣れてもらうのが狙いだ。「すでに10数社の企業から協力の申し出があり、実習生も5名の参加が決まった。その後の就職へのステップアップとして活用してほしい」と、PSCは期待を込める。
もうひとつの特徴は就労支援に限らない、生活困窮者支援のノウハウだ。求職者の状況に応じて、たとえば生活支援が必要な場合には社会福祉制度や関連サービスへつなぐ等の対応をしている。また10以上の連携団体とネットワークを組んでおり、複数の専門領域をもつ団体が、それぞれの視点から利用者の課題解決にあたっている。複合的な事情や問題を抱える利用者を伴走しながら支えているのだ。
就職へのハードルが高い求職者が抱える課題の多くは、震災の前からあったものだ。丁寧な伴走型支援で課題解決を目指すPSCのアプローチは、被災者支援から生活困窮者支援へと今後フェーズが移って行く中、需要を増していくだろう。
文/瀬名波 雅子
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