※本寄稿文は、復興庁よりご提供いただいたものです。
震災から 2 回目の冬を迎えています。仮設住宅などでの避難生活も長引いてきました。応急的に提供された設備や備品の劣化、ボランティアの減少、コミュニティ活動に参加する人の固定化など、「時間の経過」に伴う課題も顕在化するこの時期。しかし、復興が進展して「終の棲家」へ移るまでにはまだしばらく、現在の暮らしが続くことになりますから、被災された方々を取り巻く環境の「メンテナンス」という視点から、2回目の冬も安心して乗り切るための工夫を考えてみましょう。
仮設住宅に被災された方々が入居されてから1年以上が経ち、かなり傷みも出てきています。例えば、部屋の中のカビや、床や壁の一部がめくれたりはがれたりしているという話を、よく見聞きするようになりました。雨漏りやすきま風もあるようです。今は少しサビているだけのところも、放っておくと雨漏りになる場合もあります。思わぬところに水がたまり、電気の配線がショートして火事になることなど、危険な状況につながる場合もあります。
「『仮設住宅』って言われるけど、住んでいる人の人生に『仮設』は無い」。ある仮設住宅に入居されている男性から聞いた言葉です。「仮」の人生などは無い。どこに住んでいても1年はその人にとってはかけがえのない1年です。「仮設住宅だから我慢する」ということでなく、住民同士で気がついたところがあれば、声をかけあってきちんと調べて、改善してもらうべきところは市役所や町役場に伝えるといいと思います。
支援する側も、「仮設だから我慢して」という考え方でいるわけにはいきません。簡単に改善できるようなことだったら、ボランティアが手がけてもいいと思います。また、専門性や経験を持つNPOやボランティアは、被災者から相談が来るのを待つのではなく、まず点検してみるのもよいかと思います。仮設住宅はもともと2年間使うという想定でしたが、あと1年2年住むとしたらどこを修繕したらいいのか住民と一緒に考え、早めに改善しておくことで問題を未然に防ぐこともできますし、孤立しそうな方がどこにおられるのかなど、仮設住宅団地の全体像を俯瞰することもできます。
仮設住宅団地で暮らす人たちよりも見えにくい在宅で避難生活を続けている人たちや、民間の借上げ住宅で暮らす方々に対しても、昨冬に不具合があったことを聞き取り、2年目の冬に少しでもその不具合をなくすにはどうしたらいいのか、ともに考えて改善しておきたいところです。
また、住宅そのものだけではなく、周辺のメンテナンスも必要です。例えば、仮設住宅の多くはグラウンドや公園に建っていて水はけが悪く、アスファルトで固めていないところには水がたまっていたり、地面が崩れてきているところもあります。子どもが遊ぶと危ないようなところもあるようです。
支援活動にも、このように「メンテナンス」するという視点が必要です。仮設住宅に入居が始まった頃や、遠隔地に避難し始めた方に注目が集まった昨年と違い、支援団体が撤退したり減少したところもあります。また、被災地でも新しく店舗ができたり、逆になくなったりと、まちの様子にいろいろな変化が出てきます。地域全体を見渡してみて、支援の過不足がないか、新たに考えてみることが必要な時期だと思います。
今シーズンは例年よりも雪が多く、寒い冬です。2回目の冬を乗り切って、いよいよ復興が本格化する春をみんなで迎えましょう。
復興庁 ボランティア・公益的民間連携班
上席政策調査官 田村太郎