【特別企画】各地域からのメッセージ 「2年の歩みと、これからの希望」【後編】

魂込めて教育に力を注ぎます。

番場さち子(ばんばさちこ)さん・福島県
南相馬市原町区の学習塾「番場ゼミナール」塾長。“しつけから受験勉強まで”をモットーに人間力で日々挑む。地元の女性たち向けに、放射能や健康、書道、手芸等を学べるカルチャースクールも運営する。

以前は塾を3つ経営、生徒100人でしたが、震災で多くのものを失い、弁護士には、移住か転業を勧められました。でも、命のはかなさを目の当たりにして、生きている人間が、命のある間に、やりたいことをやらずして何の意味があるのかって。残りの人生、好きな教育をしてお仕舞いにしようと決め、塾を再開し、今日まで全力でやってきました。
まだまだ環境・状況は厳しいですが、明るい兆しも出てきています。例えば女性がおしゃれを楽しむようになり、好奇心が出てきました。「ベテランママの会」を結成し運営しているカルチャースクールも盛り上がっていて、嬉しいです。家で母親が明るいと皆が明るくなりますからね。

少しずつ、具体的な未来へ。

玉川啓(たまがわあきら)さん・福島
福島県浪江町復興推進課、主幹。町の復興ビジョンおよび復興計画の策定において中心的役割を担う。

浪江町では昨年4月に復興ビジョン、10月には復興計画が策定されました。計画策定にあたっては100名を超える町民らと共に徹底して議論を行いました。良かったのは、役場内や住民団体など、多くの人が計画策定プロセスに関与したことです。復興はなかなか思うようには進みません。ただし、できるところから一つひとつクリアにしてきたことで、抽象的だった未来が具体的日付の入ったものになってきています。今年、来年と動き出すための下地となった手応えがあります。
また復興支援員の活用により、具体的な県外避難者支援策や、津波被災地のまちづくり議論が開始しました。1年前には考えられなかった成果です。少しずつでもやるべきこと、できることを明確にしていった先に未来があるのだと思います。

地域の宝を守り続けます。

清水卓(しみずすぐる)さん・岩手県
社会福祉法人大洋会。障害者向け福祉施設「青松館」の運営に携わるほか、昨年からは被災した「石川製油所」から精油技術を引き継ぐ椿油事業を担当している。

東北唯一の椿油の搾油所で、地域の宝だった「石川製油所」から技術を引き継ぎ、製油所を開所してからもうすぐ1年です。今シーズン(秋〜冬が椿の種の収穫期)は不作の年でそれほど忙しくなかったですが、技術の継承に努めながら、東京の化粧品メーカーとの共同商品の販売も開始できました。
近隣地区に留まらず、県内、全国の方々に気仙の文化を知って頂けた事が大きな収穫でした。そして一時は廃業を決意された石川さんが元気になったことが、何より嬉しいです。今シーズンは豊作が予想されていますし、しっかり生産体制をつくりたいと思います。

既存の枠を越え、新しい発想で!

畠山信(はたけやままこと)さん・宮城県
気仙沼市唐桑(からくわ)地区で養殖業を営む傍ら、NPO法人「森は海の恋人」副理事長として環境保全活動を行う。NPO法人「ピースネイチャーラボ」で6次産業化ビジネスにも取り組む。

従来型の、自然の恵みを消費するだけの産業のあり方を見直し、生態系を守り育てながら循環型の産業を興していかないと、いずれ山が痩せ、その恩恵で成り立つ農業も漁業も廃れ、防潮堤のコンクリートがとどめを刺し、何もなくなってしまうと思います。唐桑で立ち上げた「ピースネイチャーラボ」では、森と海、それつなぐ川の流域全体を1つの単位として考え、里の農産物を使った穀物バー「森のクッティー」や、間伐材のチップを使った牡蠣の燻製などの新商品を開発しています。
県外や海外に目を向け、発想を新しく、子供の悪巧みのようにワクワクしながら挑戦していきましょうよ。東北は素晴らしい所です。特に観光は希望が多いと思います。皆さんにメッセージですか?「長生きする気でいるなよ」でしょうか。僕はこう考えたらあらゆることが急に楽になりました(笑)。

NPOが社会の大事な機能になるように。

葛巻徹(くずまきとおる)さん・岩手県
北上市に事務所をかまえる「いわて連携復興センター」事務局長。岩手県内のNPO間はもちろん、県内外、セクターを超えた連携を促進している。

NPOの中間支援団体として、被災地で活動するNPOへのサポートや外部とのつなぎを続けてきました。国や県とお話する機会も増え、着実につながりは広がってきていると感じます。
しかしながら、まだまだ社会全体に対してNPOの存在は小さいです。NPOが行政や企業とならぶ1つの社会機能として捉えられるためには、担える役割や生み出す価値をより明確にしていく必要があります。そうした先に、たとえ復興関連で資金が集まりづらくなった中でも、社会が各団体を少しずつ支え、活動が継続する状態が生まれるのだと思います。

三陸の漁業はきっと、変わります!

阿部勝太(あべしょうた)さん・宮城県
石巻市十三浜の漁師。漁業生産組合「浜人(はまんと)」を設立し、「wakamo」プロジェクトなどを通じてワカメや昆布の魅力を発信。若手漁師の連携にも積極的に取り組んでいる。

この一年、6次産業化を目指し、これまでの「漁をして終わり」ではなく、情報発信やイベント、ウェブ販売を勉強しながらやってきました。今までいかにお客様を見ていなかったか、高く買ってもらう努力をしてこなかったか知りました。そして今、自分なりに見えてきた道は、漁師が全部やるんじゃなく、加工業者さん、販売業者さんと3者でチームになって取り組むという方向性です。徐々に量も単価も上がってきました。
ヤフーさん・東の食の会さんの始めた「三陸フィッシャーマンズプロジェクト」も大きな希望です。商談で、もしワカメで断られても、例えば海鮮しゃぶしゃぶならOKになったりする。三陸の漁師たちで知恵を出し合えば、価値も販路も広がると思います。力を合わせ、漁業を面白くて稼げるものにしていきたいです。

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