[巻頭言] 復興とは何か。~軸ずらしのスヽメ~

 「復興とは何か」、中越地震(2004年)以降、この問いに悩まされてきた。震災から2年が経過しようとしている。被災地の誰しもが復興に向け努力しているが、努力すればするほど「復興とは何か」という問いに悩まされる。そこで、ここでは一息ついて読者の皆さんとともに「復興とは何か」を考えてみたい。

 「復興」の明快な定義はない。ただ一般的には「災害前に比べ良くなったと思うこと」という感覚(復興感)があるだろう。ここで思考実験をしてみよう。縦軸にGDPあるいは人口をとってみる。そして横軸に時間をとってみる。1945年を起点とすると概ね下図のような曲線を描くことができるだろう。さて、ここからが本番。新潟地震(1964年)をイメージしよう。①災害で様々なものを失った。その失ったものを元にもどす。この時代は「右肩上がり」すなわち、世の中勝手に良くなっていった。この時代は「復旧=復興」、失ったものさえ元に戻せば「災害前に比べ良くなったと思うこと」ができた。次に、中越地震。②災害で様々なものを失った。その失ったものを元にもどす。この時代は「右肩下がり」すなわち、世の中勝手に良くなってはくれない。この時代は「復旧≠復興」、失ったものを元に戻すだけではいつまでたっても「災害前に比べ良くなったと思うこと」ができない。ここで「復興とは何か」がわからなくなってきた。

 「復興とは何か」を悩むなかで、はたと気付いた、そうだ「はかる指標が違う」のでは。従来の指標ではいつまでたっても復興できない。右肩上がりにするにも無理があるのはご承知だろう。ここから復興するためには「軸(指標)をずらす」ことが必要なのだと気付いた。次に、軸をどこにずらせば良いのかという疑問がわいてくる。右肩上がりの時代は、豊かさ=「数ではかれるもの(人口、経済等)が増えること」だったのではなかろうか。さて、右肩下がりの時代は、豊かさ=「?(まだ探せていない)」。ここから「復興とは何か」の問いが生まれてくるのだろう。その意味では、復興とは「豊かささがし」と表現できるかもしれない。ここで、先んじて悩んできた先輩からのアドバイスをご披露しよう。「軸はひとつではなさそうだ」ということ、そして「人それぞれの軸がありそうだ」ということ。

 ここまでお付き合いいただいた読者の皆さまに感謝。たまには現場から離れて頭を柔らかくして思考をめぐらせてみることも必要かもしれません。さあ明日から、新たな気持ちで、柔らかい頭で現場に向き合いましょう。健闘を祈ります。

稲垣文彦(いながき ふみひこ)
(社)中越防災安全推進機構 復興デザインセンター長

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