大船渡市末崎町に学ぶコミュニティづくり
被災地域は以前から人口減少傾向にあり、高齢化が進んでいた。震災によりさらに高齢化は進み、その状況は要介護・要支援の認定率の著しい増加等にも現れている。全国的に高齢化が進む中、被災地域におけるコミュニティづくりは日本全体の課題だ。
コミュニティ再生を目的として、官民でICT活用による様々な取り組みが行われている。原発被害により村民が避難生活を送っている福島県飯館村では、全世帯にタブレット端末を配布した。村役場からのお知らせや放射線量情報、アンケートなど、情報提供機能がメインの施策だ。しかし昨年12月には約3割の端末が一度も使われなかったという調査結果が出ており利用は低調だ。
岩手県大船渡市末崎町では「デジタル公民館まっさき」というICT活用のコミュニティ再生事業が行われている。インターネット環境を整備した公民館を拠点に、外部のITボランティアらによるパソコン教室やビデオオンデマンド環境による学習機会の提供などを行っている。震災後この取り組みが始まり公民館は継続して多くの住民が訪れるコミュニティスペースとして機能している。
末崎町の成功要因は2つあるだろう。1つは、情報提供ではなくコミュニケーション機能を提供したことだ。これは同町で行われた住民アンケートの結果でも裏打ちされている。「インターネットでやりたいこと」として、ニュース等の情報取得よりも、名刺づくりやブログ発信、写真メール送付などのコミュニケーションへの希望が多くを占めているのだ。
もう1つの成功要因は、内外サポーターとの連携だ。東京からの復興支援ITボランティアを受け入れ、コミュニケーションを図ることで、住民のニーズに合ったパソコン教室やイベントなどを運営している。地域内外からのサポートを受け入れることで、そこにコミュニケーションが生まれ、さらに支援が続くという好循環が生まれているのだ。
コミュニティづくりの鍵はコミュニケーションの質と量だ。交流を目的とし、地域内外のサポーターと連携しながら、コミュニケーションを促す取り組みが有効だろう。
文・図/藤沢 烈(RCF復興支援チーム)
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「デジタル公民館まっさき」の地道な取組みは、すばらしいと思います。
他の地区にも取り入れてみてはどうだろう。