2007年から独自の地域SNS「ふらっと」を運営してきた河北新報社。震災後は地元の大学・NPOとの連携により「情報ボランティア」というブログを始め、大学生記者と共に被災地情報を発信している。プロの記者からだけでなく、市民と共に市民目線の情報発信を行ってきたといえる。
これらの取り組みは、単なる情報発信以上の意味を持つ。それは発信のための「場づくり」であり、新聞社として持つノウハウを市民に伝え発信力を育てることでもある。復興現場の状況は刻々と変化する中、地域毎に個別ニーズを抱えるフェーズに入ってきている。各現場で目の前の状況と向き合った人からの発信の重要性が増している。「発信者の層を増やしていく必要があります。発信層の増加は、今後起こりうる災害の際にも大きな力として活きてくるでしょう」。ふらっと及び情報ボランティアを運営しているデジタル編集部長の八浪英明氏は話す。
では情報発信にあたってはどのような点に気をつけるべきか。「ブログもソーシャルメディアもあくまでツール。読み手を想像し、伝わりやすい構成や表現を考える。その繰り返しを行うこと」(同部の相原研也氏)。「向き合うべき人・ものと向き合っているのか自問すること」(八浪氏)。デジタルと名前のつく部署の2人からは、大切な情報はオフラインである「現場」にあるという答えが返ってきた。
復興においては「寄り添う」という言葉がよく使われるが、元合唱部という八浪氏はこのような表現で説明してくれた。「いい音を出すには、息を合わせる必要があります。情報発信においても、相手の呼吸を聞く、そんな姿勢が大切なのではないでしょうか」。
長い復興への道のり。発信者は、各人が向き合うべき相手の呼吸を聞きながら、丁寧な情報発信を心がけていきたい。
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