復興コーディネーターとそのマネジメント
住宅再建や新たなまちづくりへ向け、各地域におけるコミュニティ形成の重要性が高まっている。岩手県釜石市では、一地区で行った「復興コーディネーター」を活用した施策が評価され、この春から市内の他地域で同様の施策が横展開されることとなった。評価が難しいとされるコミュニティ支援等のソフト的活動だが、どのような成果があったのか。復興コーディネーターの役割と、それを支えたマネジメント手法を取材した。
住民活動を支える復興コーディネーター
岩手県釜石市の南部に位置する唐丹(とうに)町。現在人口2千人強の同町沿岸部はそのほとんどが漁村で、7つのうち6つの地区が被災した。東京を拠点とする一般社団法人RCF復興支援チーム(以下RCF)は、昨年6月より同町に「復興コーディネーター」を派遣し、コミュニティ形成支援を行ってきた。
復興コーディネーターの役割は大きく2つ。1つは住民活動のサポートだ。草むしりから地元中学校の駅伝大会、各種イベントの企画運営や震災記録誌の制作、助成金取得など、あらゆる住民活動をサポートしてきた。こうしたイベントなどの活動を通じて、外部との触れあいや住民同士の再会の機会が生まれ、地域の活気につながっている。
「住民の方々がしたいことを大切にしながら、実現へ向けて色々なアイデアを提案しながら進めています」復興コーディネーターとして昨年7月から現地入りした山口幹生さんは話す。彼らが住民からの大きな信頼を得ている理由は、さまざまな支援活動とともに、外部の人間として「前に出過ぎない」立ち位置にも秘訣がありそうだ。
外部だからこそできる調整役
もう1つは、まちづくり議論の場づくりだ。RCFが唐丹で活動を開始した際、公営住宅や土地利用など先が見えない中、行政からの説明に疲れを感じる住民も少なくない状況だった。こうした中では住民主体のまちづくりは実現できないと、RCFは議論の場づくりや調整に奔走した。その一つが、町内会役員や仮設の自治会長など住民の中心メンバーに提案した、行政が主催する協議会に先駆けて行う連絡会議だ。会議では長期的にこの町をどうしていきたいのかが話しあわれ、最終的に行政側へ提案する意見が集約されるよう、ファシリテーションや事前調整を行った。
「どの地域にもさまざまな人間関係がありますが、第三者だからこそ橋渡しや調整がし易いということもあります」と山口さんが話す通り、調整役は外部の支援者ならではの役割と言えるかもしれない。事前の連絡会議の成果もあり、11月に行われた協議会では拍手がわき起こる盛況な会になったという。
住民の代表性をつくりだす
RCFでは、こうした活動の先に目指すものを明確に定めている。
「大切なのは代表性のある住民組織があることです」。こう話すのは同法人代表理事の藤沢烈さんだ。地域内にさまざまな住民組織やコミュニティが存在する中で、「あの人が言えば」という信頼を得ているリーダーの存在は非常に重要。そうしたリーダーや組織は代表性を持つため、行政から見ても会話や調整がし易い相手となる。当然、住民からしても意見が通り易くなる訳で、結果的にまちづくりが加速化する。
「よく行政・住民間の連携が課題と言われますが、実は本質的な課題は住民同士の連携だと気づいたんです」(藤沢さん)。復興コーディネーターは、住民活動の促進や場づくりを行いながら、住民間のコミュニケーションを円滑化しているとも言えるだろう。
復興コーディネーター施策3つのポイント
第三者的な立ち位置
前に出過ぎず、外部の人間として相談に乗り、提案や調整を行う。あくまで意思決定は住民側
徹底した指標管理
住民組織の代表性や住民の自主的な活動、多様性の取り入れなど、定性項目も指標として管理する
セクターを超えた連携
指標の進捗などを確認する場を定期的に開催。住民、行政、外部などセクターを越え連携しながらプロジェクトを推進する
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山口さん、頑張って下さい。応援しています。