指標設定と綿密な業務マネジメント
復興コーディネーターの成果を支えているポイントはこれだけではない。マネジメントレベルにおいても、さまざまな工夫がされている。まずは徹底した指標管理だ。前述の「代表性のある住民組織が存在する」に加え、「住民による自発的な活動が行われている」「議論において女性や若者などの意見が吸い上げられている」などの10項目以上を指標として設定し、エクセルシートで地域ごとに詳細に管理。そしてそれを行政や関連団体と定期的に進捗確認を行っている。こうすることで、業務マネジメントに留まらず、セクターを越えた関係者間でのゴールの共有が実現されているのだ。
こうしたノウハウは、今後釜石市内の他地域でも活用される予定だ。またRCFでは、市や県を越えて被災地全体にも、コミュニティ形成支援のモデルとして活用してもらいたいとしている。
市内他地域での横展開を開始
唐丹町では、約9ヶ月間の復興コーディネーターの活動の成果として、前述の「代表性のある住民組織の構築」等の各指標において改善が見られた。これをうけ釜石市は、この4月より復興コーディネーター施策を横展開する。「釜石リージョナルコーディネーター」(通称:釜援隊)の名前で順次採用する。
展開にあたり、市はまず市内の被災地区のリサーチを行った。自治会など住民組織や生活応援センター等の行政組織などへ集中してヒアリング。各地域のリーダーやコミュニケーション状況を把握し、展開地域を選定した。結果、東部地区と鵜住居周辺の地区を重点地区と設定し4月から7名、7月からさらに7名が採用される予定だ。
マネジメントスキルを地域に根付かせる
「各地域で固有の状況があるため、唐丹とまったく同じ形でやる訳ではありません」。こう話すのは、リサーチや役場内調整を行う釜石市復興推進本部事務局の石井重成さん。RCFという外部団体として復興コーディネーターが現地に入った唐丹と異なり、釜援隊のメンバーは各地域の中心的な住民団体・組織に派遣されるかたちとなる。それぞれは別の団体に属しながら、横串でマネジメントを行うことで成果を最大化するという狙いだ。4月から活動を開始する7名のマネジメント役には、唐丹に入っていたRCFメンバーも参加する体制だ。
マネジメントにおいては、唐丹で行われていた業務管理や指標管理に加えて、釜援隊内におけるノウハウ共有や、地域をまたがってのリソースマッチングが行われる。各地域の課題や状況を共有しながら、チームとなり一緒に解決していく形だ。こうした一つひとつのスキルが少しずつ各地域に根付いていくことは、長期的に見てこの施策の大きな意義だと言えるだろう。
地域の声
アイディア豊富な、頼れる相談役です
唐丹地区生活応援センター所長 兼 釜石市立唐丹公民館長 見世健一さん
「こういった点で困っているんだけれども」と誰かに相談したい時に「じゃあこれ試してみますか」ってすぐそばで答えてくれる存在がいるって大切なことだと思います。そういった人がいてくれるだけで安心感も生まれますし。唐丹にとってのその存在がRCFの皆さんでした。
復興に向けて新しい取り組みが求められている時に、アイデアを持ってきてくれるのも本当に助かりました。こちら側が「やりたい」と申し出た時にさまざまな提案をしてきてくれる。「そういったこともできるんだ」と私達にはない視点で形にしてくれる。もう、なくてはならない人たちですね。
地域の人が集まる機会が嬉しい
唐丹町小白浜仮設団地自治会長 上村年恵さん
震災後に仮設団地が分かれてしまい、地域の人が散らばってしまっていました。「集まりたいね」なんて話はするけれど、足が悪いのに坂は多いし、何かと自分たちだけでは不便。RCFの皆さんには、地域をまたいだスポーツ大会や懇親イベントなどをお手伝いして頂いて。
おんぶに抱っこで申し訳ないような気はしていますけど、みんな久しぶりだねえ、って喜ぶんです。正直な気持ち、「まだ地域のみんなに負担をかけたくない」という気持ちがあります。だから「私たちがやります」と率先して声をかけてもらえるのは本当に助かりますね。お言葉に甘えちゃう存在です。
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