[巻頭言] 支援から共に創るへ ~復興から新興への道すじ~

 東日本大震災から2年の節目を迎え、復旧から復興の槌音がようやく聞こえてきた。あらためて尊い御魂に深い哀悼と感謝の意を表し、現地の方々と共に復興を担う一人として、今後大切にしたい姿勢を提言したい。

 東北には素晴らしい資源・資産が沢山ある。豊かな森・里・川・海、美しい景色、美味しい食ベもの、伝統文化。助け合い支え合うコミュニティ、地域再生を誓うリーダーたち。取り組むべき共通の大きな課題に対して日本各地、世界からの応援があり、受け入れる土壌ができた。これほどの条件が揃うことはまずない。

 3年目は10年先・20年先の地域の姿を描く大切な正念場となる。誰かが絵に描いた餅ではなく、住民による、住民のための、地に足のついた「新しい地域づくり」が始まる。復興支援を、次世代に残したい日本を共に創る「新興事業」に変えよう。

 まず、地域、産業、人を「共に創る」には、同じ方向を見て真剣に議論し行動するチームが必須だ。地域を心底愛する地元リーダーと、彼らと苦楽を共にしてきた外部支援者が核となる。支援する―されるの関係を超越しているから、周囲にもその関係性が伝播する。

 核のまわりに、これからの長期的な復興を担う多様な力を結集しよう。ただ場をつくるだけ、人を繋ぐだけでは成果に結びつかない。目指すべきビジョンと、物事を進める場づくりのプロが必要だ。

 その場では、ビジョンを実現するために、どう持続可能な事業モデルを構築するかをしっかり議論しよう。「支援」はどうしても他人事になり遠慮がある。ビジネスの観点が必要だ。強みを活かし合い、地域事情を十分理解しながらも、本気で成果を求める議論をしよう。

 成果は復興の先の新興を目指そう。復興と新興との違いは、見えている10年後の景色だ。地域に長く暮らす人々の多くは、元の生活を取り戻すことが復興のイメージだろう。ところが、失ったものがあまりに大きい東北沿岸地域はそれが不可能な状況だ。であれば課題先進地域における「新興」を目指す方向に早く舵を切るしかない。外部の力を活かし、震災前の課題も同時に解決する持続可能なソーシャルビジネスを産み出すことに注力したい。

 一部で漁業の六次産業化、コンパクトシティ、地産地消エネルギー、宅配見守り、森・海の学校等々の新たな取り組みが始まっている。東北で生まれる新興事業は、日本各地のモデルになるだけでなく、いずれ高度成長期を過ぎ高齢社会に突入する新興国のモデルになるだろう。

鷹野秀征(たかのひでゆき)
一般社団法人新興事業創出機構(JEBDA)理事長。復興庁上席政策調査官(非常勤)。アクセンチュア勤務後、NPO支援・CSR支援・社会起業家支援を本業とし、震災後JEBDA設立。パブリックリソース財団、SVP東京パートナー、りあすの森、ガーネットみやぎの理事も務める。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です