話の舞台は2011年5月に開局した災害ラジオ局「FMみなさん」。町の臨時職員として採用された9人は全員が素人だった。それでも、「ラジオを通じて一人でも多くの人を笑顔にしたい」と、慣れない仕事に奮闘する。毎日ラジオから流れる温かい声は、住み慣れた家や大切な家族を失った町民の力となっていった――。
映画だからこそできる息の長い発信
リーダーとして「FMみなさん」を運営した工藤浩典さんは、映画の公開にあたり、「日本から世界に、こういう悲惨な出来事があったと伝えていきたい」と語った。CMプランナーでもある共同監督の梅村太郎さんは、震災関連の報道が減る中で「映画だったら息の長いコンテンツになるんじゃないか、10年先、20年先もずっと見てくれる人がいるんじゃないか」と考え、本業の傍ら撮影を続けた。
東北が日本、世界に伝えられること
「FMみなさん」は、2012年3月までの期間限定。映画の後半、閉局を控えた彼らは「出発式」というイベントを行い、町全域に生中継する。「思い出が流されたら、新しい思い出を作り直せばいい」。目の前の人に笑ってほしい、多くの人に一歩踏み出す力を伝えたい、と全力を尽くすメンバーの姿は、観る人に、仕事の原点を教えてくれる。
震災から2年。被災地外での関心の低下は否めない。だが、東北の地から、日本中へ、そして世界へ伝えられることはまだまだあるはずだ。
働くこと、故郷への思い、家族との関わり方、未来への希望・・・この映画には、「生きること」にまつわる様々なものが詰まっている。見た人一人ひとりが、きっと自分の物語を見つけ、さらに一歩踏み出す力を見出すことだろう。
文:riepompom
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