春。平年より早く開花した桜は、花見の季節を待たずその葉を散らしていった。新しい学校。新しい職場。人との出会い。慌ただしい新年度のスタートに不安と期待が入り混じる。
「故郷岩手のために」と東北復興新聞を手伝い始め約半年。4月から大学4年生になり、就職活動も中盤に差し掛かった。先日、面接官から「印象に残った記事や出会いは」と質問をされ、言葉を詰まらせてしまった。
胸が熱くなる出会いがなかった訳ではない。むしろ東北を訪れるたび身体に染みていくその土地と人の熱量を忘れることはできない。
ただ、そのような一期一会の出会いを「1つ1つ振り返ってこなかった」と気が付いた。東北との思い出を言葉に出来なかったあの面接。後悔の念がにじむ。
「歩んだ道を振り返ろう」。今まで書いた原稿を読み返した。稚拙な文章力に頭を抱えた。夜な夜なの作業をこなせたのは東北の熱量に励まされてこそだった。「支える側なのに、支えられている」。感謝の気持ちがこみ上げた。
面接官の問いをきっかけに初心を思い返した。「東北のために」。その思いを、今後一年の決意も込めて、この言葉に乗せたい。「ありがとう。そして、これからもよろしく」。(ひ)
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