「底上げユース」は、同市の高校生が昨年9月に結成。現在メンバーは21名。気仙沼の魅力を学びながら発掘し、若い世代ならではの視点と表現で発信している。
「恋人」をテーマに観光スポットを紹介
気仙沼の観光案内を制作するにあたり、地域の特色や歴史を調べた高校生たちは、同市出身の歌人・落合直文が「恋人」という言葉を現代語で初めて使った史実に着目。観光スポットを「恋人」という切り口で紹介するというアイデアを考えついた。
今回完成した1作目のリーフレットは、落合直文の生家でもあり、市指定文化財の庭園を持つ「煙雲館(えんうんかん)」を紹介。気仙沼出身の男子大学生と東京出身の女子大学生を主人公にしたラブストーリーに「400年の歴史がある庭園の池を右回りに回ると恋が長く続く」など、オリジナルのジンクスも交えながら煙雲館の魅力を表現している。
今後もさまざまな景勝地や伝説のあるスポットを選び、リーフレットの続編を制作していく。さらに来年3月には大学生を対象にした「恋人ツアー」も企画中。地域に新しい風を送り込もうと意欲的だ。
主体的な取り組みで高校生らが成長
中心メンバーの阿部愛里さん(気仙沼西高校3年生)は、昨年夏にソフトバンク・リーダーシップ・プログラムで3週間渡米したことがきっかけで、地域貢献への関心が高まった。帰国後に町を歩くと、市場など生活に直結したものは復興が進んでいるのに対し、観光は置き去りになっていると実感。「大人の手が回らないことは、私たち高校生がやろう」と思い立つ。そこで当時通っていた、NPO法人「底上げ」が行う学習支援の場でスタッフに相談。高校生団体の結成に至った。阿部さんはこう振り返る。「底上げのスタッフの皆さんは、私たちを信頼し、見守ってくれるだけ。試行錯誤し失敗もしながら取り組んだことが、主体性や積極性、仲間の団結力などの成長につながり、皆の地域貢献への想いも強くなりました」。
サポートしたNPO底上げの代表理事・矢部寛明さんは「最初彼女たちの中にあった『できない』『仕方がない』という諦めの雰囲気が、『やりたい』『できる』『やる!』に変わり、目がキラキラ輝き出した。その様は本当に素晴らしいものでした」と話す。
地域の高校生による観光振興という、画期的な取り組み。その明るいエネルギーは地域内に、そして他地域にも波及していくことだろう。
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