復興と足並みをそろえた地域包括ケアを
石巻市の開成仮設住宅団地内に、包括ケアセンターが開設された。医療、介護、福祉などを統括して、仮設住民の健康や生活をサポートする。長期化する仮設生活による住民のさまざまな課題の解決を図るとともに、国が推進する「地域包括ケアシステム」のモデルとなるよう期待が寄せられている。
被災地固有の課題解決を視野に
地域包括ケアとは、介護が必要になった高齢者でも、住み慣れた自宅や地域で尊厳を持って暮らし続けられるようにサポートする仕組みのこと。住まい、医療、介護、予防、生活支援等の様々なサービスが連携し、包括的に提供されることを目指している。進行する高齢化は被災地に限らず全国の課題であり、厚生労働省は団塊の世代が75歳以上となる2025年を目処に、各地域における包括的なサービス提供体制の構築を推進している。
具現化へ向けて全国各地で取組が進められているが、被災地は固有の課題を抱えている。
一つは震災の被害という側面。阪神淡路大震災においても、発生2〜3年後前後から自殺者が急増したという例もある。仮設生活が長期化する中、今後さらに心身両面でのケアが必要となる。
もう一つは、地域コミュニティの側面。地域包括ケアは病院や介護士のようなサービス提供者だけでなく、地域住民も含めて支え合うコミュニティの重要性が高い。震災により、多くの地域で元々のコミュニティが離散した。今回の包括ケアセンターは主に仮設住民を対象としたものだが、「今後また仮設住宅から恒久住宅へと移行が始まる。コミュニティの再構築を含め、復興の状況と足並みを揃えていく必要がある」と宮城復興局の担当者は話す。
13年度中にモデルを構築
包括ケアセンターが対象とする開成・南境地区の仮設団地には、5千人近い住民が住む。開成団地内には昨年より石巻市立病院の仮診療所が設置され、住民に医療サービスが提供されてきた。加えて、支援団体等の外部との連携体制が構築され、保健師や看護師など他職種の専門家が集まり情報共有を行う「エリア会議」も行われてきたことが、今回のセンター開設の大きな素地になっている。
石巻市健康部の高橋次長は、「今後はさらに連携を強め、情報の集約も行う。専門員の確保や住まいの移行後への引き継ぎなど課題は多いが、このセンターが先駆けとなれるよう、課題の洗い出しや各プレイヤーの役割設計等を行い、今年度中にモデルをつくっていきたい」と話す。また復興庁も、自治体への職員派遣のスキームを活用して人的支援等を検討していくとしている。
震災により高齢化等の社会課題が「10年進んだ」と言われる被災地から、全国に先駆ける包括ケアモデルが生まれるか。これからが正念場となる。
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