休校になった地域の小学校を利活用 住民が教授、技が学部の「大学」を開校
そんな迫田さんが「ずっとやりたかったこと」と言うのが、住民の住民による住民のための、地域の魅力発信プロダクション。今年4月に設立した「しまんと住民プロダクション」だ。四季折々のさまざまな出来事を、住民が取材をし、紙やウェブで発信する。「じいさまのいい顔を引き出す天才」という60代のカメラマン・通称のぶちゃんを始め、現在10名程の住民が所属し、活動している。このプロダクションが主体となり、始めた取り組みがある。今年5月に開校した「西ヶ方大学」だ。
これは、昨年3月に休校になった西ヶ方小学校を活用し、地元住民が山の暮らしで培ったさまざまな知恵や技術を学ぶ大学。「地元にある技術を学部に置き換えたら、皆が教授になれるんじゃないか?」という発想から始まったという。
教授陣のほとんどが小学校の卒業生である地元のじいさま・ばあさま。彼らから、鮎漁やシイタケ栽培、大工技術などを学べる10の「学部」を設立。女性の茶飲み仲間からは、郷土料理や保存食を学びながら商品を考案する「お茶のみズ学部」が生まれた。これまでに炭窯づくりや田植え、BBQ講座などが地域内外の人と共に行われた。2013年度はモニター講座として無料開催するが、今後は事業化し、全国から生徒の募集をかけて運営していくという。
消えゆく日常の中の価値を残し、未来へ
「大学」というのは一つの模擬的な形だが、結果として今、児童の居なくなった小学校に地域の人が集まるようになり、校庭では鮎漁の投網練習をするじいさまと若者の姿がある。先日は皆で勉強し、BBQインストラクターの試験も受けた。「大学だもの、大学いもを作ろう!」と、さつまいもの栽培も始めた。地元の人々の中に、ワクワクした好奇心とダジャレ心、そして訪れた若者に伝えたいアイデアが次々に湧き出てくるようになった。その傍らで、愉快そうに笑っているのが迫田さんだ。迫田さんにこれらの活動のモチベーションは何か尋ねた。
「田舎という言葉は、田(風景)と、人(生き方)、土(土地=しきたり)、口(食べ物)でできています。今、身体に染み込ませないと無かったことになってしまう多くのことを、留め、定着させて、未来に使う、そんなセンスを四万十からつくりたいんです。……でも一番は、僕自身が今をめいっぱい生きたいだけなんでしょうね」。
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