現場の「物語」をまとめてブランディング
東北発のものづくり現場の情報を集め、その背景にある「物語」を紹介するWEBサイト「東北マニュファクチュール・ストーリー」。一般社団法人つむぎやが運営するこのプロジェクトは、開始からわずか4ヶ月だが、13ものメディアがとりあげ、蔦屋代官山書店をはじめ、既に9つの販売イベントで出店が実現し注目を集めている。理由の一つは、このサイトが持つ「まとめるというブランディング力」にある。
東北地方では、約40の被災地で、200を超える多彩なものづくりがなされているというが、その多くが小規模で行われているため、情報が埋もれてしまっている。その結果、東北のものづくりを応援したいという人やメディアに、情報が届かない。
このような状況下だからこそ、それらを「東北マニュファクチュール」というキーワードでまとめ、ブランディングすることに大きな意義があるのだ。上述のようにメディアの注目を喚起しやすくなり、販売イベントへのオファーも集まりやすくなった。
そして、もう一つは広報の工夫。担当の新飯田(にいだ)稔さんは「開始から4ヶ月が経過し、『こんなサイトが始まりました』だけではとりあげてもらえない。だから、新しい情報を発信するなど、内容も工夫すべきです。今後は、例えば、優れたものづくりの現場を顕彰する『アワードの開催』なんかも考えているんですよ」と話す。
商品力を高め継続的なビジネスへ
一方で課題もある。それぞれのものづくりは必ずしも継続的なビジネスとして成り立っている訳ではない。商品力、生産力、販売力、いずれも発展途上段階というものづくりの現場が少なくない。被災者が手作りした「復興グッズ」の売れ行きの落ち込みが目立ってきた昨今、復興消費に頼るだけでは経営が難しいのは明白だ。広報力に加え、技術力や企画力の向上、物流面等も視野に入れた、トータルで商品力を高めるプロデュース力が今後は必要とされる。
東北マニュファクチュール・ストーリーは、時計ブランド「ジラール・ペルゴ」の継続的なサポートのもと運営されているが、このサイトをスイス本社のHPで紹介する企画もあがっていると言う。こうした取り組みも含め、「ジラール・ペルゴの力を借りながら東北のものづくりと息長く伴走していきたい」と新飯田さんは語ってくれた。その動向に今後も注目していきたい。
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