「海外展開」 ベトナムで農業指導、日本の技術を海外へ
復興を超え、日本農業の再生を
宮城県岩沼市 株式会社フレッシュファーム 村上和之さん
震災前、大学教授や研究者と共に「活性酸素消去農法」を開発し米や野菜を中心とした生産を行っていた村上さん。美味しく栄養価も高いと順調に生産規模を拡大していたが、その矢先に被災。田畑や機械は浸水、農作物は壊滅的な被害を受けた。機械の復旧や土の再生には長い時間と莫大な費用を要するため、苦境に立たされた。
こうした状況下、村上さんは攻めに転じる。被災農家による情報発信プロジェクト「野菜のキセキ」を立ち上げ、SNS等を活用しながら都内でのイベント出店や田植え体験イベントの開催などを積極的に行う。あわせてレトルト米を開発する六次産業化プロジェクトや、他地域の企業への技術協力など、精力的に活動の幅を広げていく。
村上さんが強調するのは戦略の重要性だ。「環境を分析し、自社の持っている強みを活かし、どこでどう戦うのかを決める。当たり前のことが農業の現場では行われてきませんでした」。そして彼が選んだ戦略は、海外展開だった。「日本の農業の強みは質です。一人一人が職人としてモラルとプライドを持って作物を作ってきた。一方、人口が減少に転じ市場が縮小する中でのTPP参加、さらに東北の農産物には風評被害もある。日本の市場が、我々の作物を正当に評価できる場ではなくなってきている」。
あらゆる伝手をたどり現地パートナーを開拓し、7月からはベトナムで米のテスト栽培を開始した。現地の米に加えジャポニカ種の苗も植え、活性酸素消去農法により育てる予定だ。現地での技術始動や販路開拓に加えて、日本への研修生受け入れ計画も進行。フィリピン、ミャンマー、カンボジアへと展開する調整も進めている。
「目指すは復興というより、再生。我々の持つ高い技術をどんどん世界に拡げて、技術の輸出拠点として新しい日本の農業の形をつくりたい」。異業種含めて、多種多様な人と関わることで自分の位置を俯瞰し、ゼロからでも海外展開を決断できたと言う村上さんの夢は広がる。
「ブランディング」 あぜみちカフェに、農業用ウェアのファッションショー
僕がつくる魅せる農業
宮城県角田市 お米クリエイター 佐藤裕貴さん
ボーダーシャツにオーバーオールを着込んだ長髪の男性。農家に見えない風貌の彼の名は佐藤さん。自らをお米クリエイターと名乗ってる。長年携わった雑貨のバイヤーを辞め、故郷の角田市小田地区に31歳の時にUターンした。農家を継ぐ気はなかったが、人口が減り衰退していく故郷を目の当たりにし、ここで地域に根ざした農業を行うと決意した。
佐藤さんのお米クリエイターとしての活動は、生産はもちろんのこと、イベント、商品開発など多岐にわたる。例えば、他にない田植え体験を実現させた「かおり米プロジェクト」というイベント。これは、山口県の子供たちが育ててきた、かおり米という米の生産を引き継ぐ際に、田植え体験を伴うイベントとして企画したものだ。田んぼまでの50メートルほどの道を3部屋分のかわいいアンティーク雑貨でデザインし、電柱と電柱の間は色とりどりの手づくりの旗が揺れる。そしてその先に見える「かおり米プロジェクト」と書かれた大きな旗。田んぼとは思えないほどかわいい空間で、80代のおじいちゃん先生に手植えを習いみんなで植える。その後は、歩いてきた畦道にテーブルと椅子を置き、みんなでご飯を食べる「畦道カフェ」がオープンする。
また、9月末には「畦道ファッションショー」なるイベントも企画している。すずこまというトマトのイベントで、フードコーディネーターや日本酒ソムリエなどが、すずこまに合う料理やお酒を提供してくれる。農業用ウエアのファッションショーも行う予定と、盛りだくさんの内容だ。
「ここよりも素晴らしい自然や景色を持つ場所はたくさんあるかもしれない。でも見せ方を工夫するだけで、そこは特別な場所になるんです。どう魅せるかにこだわりながら、大好きな小田を盛り上げていきたいです」と佐藤さん。彼に見せられた多くのファンが既に小田を訪れている。自由な発想と地元愛にあふれた生産者が、消費者との新しい関係を築こうとしている。
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