震災以降、被災地ではマンパワー不足が続いている。総務省や復興庁は既に被災自治体への人材派遣を促進するために、経費負担等を行う制度を整備。経済団体などを通じ企業からの社員派遣をしてきた。またすでにいくつかの企業が社員を被災自治体等に派遣し、専門知識を生かしながら復興業務にあたる事例も出ている。復興庁はこの事業により情報発信を強化し、そうした動きを加速させる狙いだ。
本事業では原則1年以上の派遣になる。現在は自治体への派遣が中心になっているが、今後は非営利組織や商工会議所、観光協会等の公益団体等へも拡大していく予定だ。
事業を実施するのは、震災以降各地で復興プロジェクトを行ってきた日本財団。事務局を設置し、主に企業、および被災自治体を訪問してニーズヒアリングの上、マッチングへ向けたコーディネートを行う。また広く人材を募るためにイベントも順次開催。10月21日に企業向け説明会、10月26日には一般個人向け説明会が決定している。
派遣元企業にもメリット
9月17日、この事業の開始に先駆け、被災地への人材派遣に興味が高い企業を対象とした「復興人材マッチング説明会」が開催された。
説明会では岩手・宮城・福島の被災3県より3市町の自治体がプレゼンテーションを行った。宮城県石巻市からは新しくできる商業施設の運営や新商品のマーケティング、岩手県釜石市からは海外向けを含めた市のプロモーションや観光プログラムの推進、また、福島県双葉町からは避難住民たちのコミュニティ維持と発展など、各自治体の取り組みの現状とともに、必要とされる人材ニーズの要望が伝えられた。
自治体によって違いはあるが、特にプロジェクト・マネジメントのスキルや新規販路の開拓など民間企業が持っているノウハウに対する需要が大きい。双葉町役場の橋本氏は「行政がこれまでに直面したことのない状況だ。ぜひ民間の知見を教えてほしい」と語った。
主催者側から度々強調されていたのは、被災地へ自社の社員を派遣することは復興支援であるとともに、企業と自治体の深い交流を築くきっかけにもなるということだ。また自らのスキルを生かしつつ、ひとりで新たな環境に飛び込みビジネスを行うことは、今後グローバル化が加速する中で活躍できる人材を育成する非常に良い機会となりうる。「WORK FOR 東北」のキャッチコピー「ともに働く。ともに育つ。」の通り、企業と被災自治体、双方にとって実りのある取り組みとなるかが今後の広がりの鍵になるだろう。
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