【Leaders Interview】公益財団法人sweet treat 311 油井元太郎理事

インタビュー先:油井元太郎さん
公益財団法人sweet treat 311 理事

循環型教育の新拠点を軸に雄勝に新たなまちづくりを

Q.「雄勝学校再生プロジェクト」を進めていらっしゃいますね

公益財団法人sweet treat 311 油井元太郎理事 震災直後の給食の炊き出しなどの物資支援に始まり、その後は放課後学校や農林漁業体験など、雄勝地区において教育支援を続けてきました。延べ3000人の子供たちに教育の場を提供し、一定の価値を出せたと思っていますが、一方で町全体の復興となると、まだまだ厳しい状況にあるのも事実です。

 そんな時に桑浜小学校という廃校になった小学校と出会い、この場を活用してまちづくりの拠点となるような教育のコンテンツを作ろうと思いました。自然の循環を体感することで「生き抜く力」を育む体験型の教育施設にしたいと考えています。

Q.教育コンテンツが、まちづくりの拠点に?

 まちづくりと教育は別次元ではなく、相互に密接に関連していると思うのです。そもそも自然に触れ合う機会が少ない都会の子供たちには、体験学習に対するニーズがあります。そして、行き過ぎた資本主義の限界から、自然の中で生き抜く知恵やノウハウなどを学ぶ「循環型教育」は、世界的にも注目され始めています。ユネスコの進めている持続可能な開発のための教育(ESD*)などは、良い例ですね。

 雄勝で、農林漁業体験プログラム等を通じ、「循環型教育」の拠点を作りたい。また雄勝ならではの硯や神楽などの伝統工芸・芸能体験を提供し、日本の心を学ぶ場にしたい。真に質の高いコンテンツをつくることで、全国から人が集まり交流人口の拡大が見込めます。そうすれば地域も潤う。ここで学んだ人たちが何年か後に戻ってくることも期待できる。震災前より雄勝がもっと豊かになることも、決して夢ではないと思っています。雄勝と同じように自然や伝統といった資源を持つ地域どこにでも展開可能ですから、良いモデルケースを作りたいですね。

Q.今後の予定や展望について教えてください

 集客、運営、資金と分けるならば、集客は過去にボランティアで関わって頂いた延べ5000人もの方々がいますし、運営面も地元の行政や住民の方々と協議会を立ち上げ運営しており、概ね順調と言えます。

 課題は資金集めです。総額で1億円を超える資金が必要となる見込みですが、このようなハードを対象とした事業には資金が集まりづらいと実感しています。そこでまず、2500万円の資金を調達するために、「ブロックファンディング」という新しいクラウドファンディングの手法を導入しました。プロジェクトを部屋やプログラム単位に分割し、12回に分けてファンドを募集。進捗状況を詳細に開示することで、寄付者にはプロジェクトとの関わりをより感じてもらえるよう工夫しました。特に日本のクラウドファンディングは小額のものが多い中、多額の資金を集める新たな資金調達方法の先進事例になりたいです。

 来春を目処にしたプレオープン、来年の秋予定の全面オープンを目指し、引き続きプロジェクトを進めていきます。

【公益財団法人sweet treat 311 油井元太郎理事 プロフィール】
子どもの職業体験施設「キッザニア」の運営会社幹部を経て現職。雄勝学校再生プロジェクトでは前職経験を活かしたコンテンツ開発の他、ファンドレイジング等も行う。

* ESD = Education for Sustainable Development

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