戦後日本の復興が進み高度経済成長に至った過程には、ソニーやホンダ、京セラといった世界に誇る企業が生まれる風土があった。
60年以上の年月を経て、東日本大震災という惨事が東北を襲った。壊滅状態となった土地からこそ、社会に変革をもたらし、新しい境地を切り開くリーダーが生まれると信じ、東北被災地から次世代リーダーを輩出することを目的としたリーダーシップ教育事業「ビヨンドトゥモロー」を設立したのは震災の3か月後だった。
以来、大学進学や高校留学を支援する「奨学金プログラム」と、被災地の高校生・大学生がリーダーになるまでの過程を支援する各種リーダーシップ教育プログラムを提供する「リーダーシッププログラム」の2つを中核とし、事業は前進してきた。
今年10月には、第3回目の試みとなる「ビヨンドトゥモロー東北未来リーダーズサミット2013」が開催され、多くの応募の中から厳しい選考により選出された被災地出身の高校生・大学生約80名が東京に集い、東北の未来の姿について提言を作成した。
親を失い、家を流され、愛する故郷の景色が一瞬にして破壊されるという体験をしながらも、東北の未来のために尽力したいという学生たちからは、「被災地と被災地の外をつなぐ交換留学プロジェクト」「震災を後世に伝えるためのミュージアム設立」など、意欲的な提言が考案された。これらの提言は、後日、安倍昭恵首相夫人に、学生たちの手から届けられることになっている。
惨事を身を持って経験し、その後の復興をも当事者として受け止めてきた若者たちの問題意識は高く、分析の視点は鋭い。逆境に立たされてもなお、その苦難を乗り越え、ゼロから故郷を創りあげるべく、復興に尽力したいと立ち上がる若者たちの覚悟と不屈の精神には、戦後日本の復興を担ったリーダーたちの姿と共通するものがあるのではないかと思う。
このような若い世代の志の芽をつぶすことなく育てていくことは、東北被災地のためならず、チャレンジ精神に溢れるダイナミックな社会を日本において実現することにつながる。ひいては、国際社会における日本のプレゼンスを高めていくことになり、日本の国益にもつながるはずだ。
東北復興を担う人材を育成することは、日本の未来にもつながるという認識の下、被災地の若者たちを応援していきたい。
【プロフィール】坪内 南
一般財団法人教育支援グローバル基金 理事・事務局長
マッキンゼー・アンド・カンパニー、難民を助ける会カブール事務所駐在、世界経済フォーラム、バーレーン経済開発委員会などを経て、11年6月より現職。