古着が伝統芸によって蘇る
首都圏を中心にファッションの商業施設を運営する株式会社丸井グループは、宮城県亘理町の手仕事グループ「WATALIS(ワタリス)」と協働しポーチやブレスレットなどのリメイク雑貨を開発・販売。7月より大阪、東京の複数店舗で催事を続けている。同社は本業を通じた社会貢献として「循環型ファション」に取り組んでいる。衣料品の7割以上が廃棄されていると言われる中、店頭で衣料品の下取りサービスを行い、リユース・リサイクルを進めるもの。以前より集まった衣類を途上国へ寄贈しており、震災後はその回収ノウハウを元に被災地へ衣料品を届けた。
今回の協働は、チャリティーで集まった衣類の寄贈を亘理町で行っていたことがきっかけ。WATALISは「FUGURO(フグロ)」と呼ばれる、着物の残り布などで作った巾着袋の製作・販売を行っており、縫製技術にも定評があった。下取りサービスで集められた衣料品を「裂き織り」という伝統的な手法によって細かく裂き織り、編むなどして新たなリメイク商品を作る。丸井の顧客の声や技術的なアドバイスを反映させながら商品の製作にあたっている。
「30人ほどの女性で構成されているグループですが、独自に技術研修会を行っており、熱い思いを感じます」と同社CSR推進部の金子強さんは話す。
状況にあわせた支援活動の変化
直後の物資提供から始まった同社の復興支援活動。11年5月から「お買い物気分で元気になってもらいたい」と、衣料品販売会社のノウハウを生かしチャリティーバザー形式にて衣類を寄贈。その後13年からは、自立の為にも「売ってほしい」との声があり、地元の衣料品店主の方々が有料バザーを行うようになった。これまでに被災各地で行われた衣類寄贈・販売イベントは60回以上、来場者数も4万人を超える。そして今回は、より本業に近い形で商品開発・販売を行うことで、現地女性グループの自立支援、雇用創出を行う。こうした変遷は、現場へ何十回も足を運び、何度もイベント会場で住民アンケートをとりニーズを聞き続け、「丸井に何ができるのか」を考え続けた結果と言えるだろう。
昨年の下取りサービスで集まった衣類は120万点を超える。首都圏にある物流センターで1点ずつ仕分けをしており、搬送費等含めてかかるコストは決して安くない。「『続ける』ことが大切だと思っています。そのためには赤字にならない仕組みへ精度を上げていかなければなりません」と金子さん。震災後に行った丸井店頭での下取りサービスでは寒い中30分、1時間と並んで待ってそれでも「持って行ってほしい」と店舗に来る方が多くいたと言う。「東北とお客様、想いと想いをつなぐ掛け橋になれればと思っています」。
丸井グループでは、今後首都圏を中心に店舗を変えて催事販売を行いながら、商品や販売方法などさらなる進化を模索していく。
文/石川奈津美
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