はばたく!高校生「なにかしたい」はいかにして「行動」へ変わったのか【前編】

 東北の高校生の活躍が勢いを増している。
 旅行会社とともにツアーパッケージを企画・運営する団体、語り部活動を開始して観光協会と組んで町の名物の1つとなった団体、インターネット上で番組放送を続ける団体等々。いま東北では、数えきれないほどの高校生プロジェクトが生まれている。
 学業も部活も受験もある中でも活動を続ける彼ら。その行動は、どのようなきっかけで生まれ、そのエネルギーの源はなんだったのか。そして行動を起こすことによって、彼らはどのような手応え、そして変化を感じているのだろうか。

高校生視点の市街地マップでまちの良さを再発見!

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行動を起こしたきっかけ:ビヨンドトゥモロウで感じた劣等感とあこがれ

 震災当時は中学生でした。翌年から生徒会長をやったんですが、1年の任期が終わったとき何もできなかった自分がいました。そんな時に、ビヨンドトゥモロウという、東北中から高校生が集まって議論をするプロジェクトに参加しました。そこで出会った高校生たちは「僕は何をしたい」というビジョンを持っていた。メンターとして一緒に議論に入ってくれた経営者の方がとにかくカッコよかった。衝撃でした。劣等感とあこがれが混じったような、不思議な感覚。何かしようと強く思った瞬間でした。

エネルギーの源:とにかく宮古が、田老が好きなんです

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 なんで頑張るのかって、もう地元が大好きだってことでしかありません。震災直後、津波で何もなくなった地元(宮古市田老)の風景を呆然と眺めた時に「故郷を失うかもしれない」、と焦りました。みんなで通った通学路とか、部活で走った堤防が破壊されていて。そして、初めて自分がこんなに地元を好きなんだって気づいたんです。負けっぱなしじゃ嫌じゃないですか。大好きな地元のために、俺も絶対なにかやってやるぞって思うんです。

行動してみて:仲間と共に成長する喜び

 自分の生まれ育った町を自分の手で再生するって、すごい大きな夢みたいなことじゃないですか。でも僕たちの意見に耳を傾けてくれる大人や、友人がプロジェクトの成功に向けて動いてくれる。東北の他の町でも、「私たちはこんなことをしている」って復興へ向けて頑張ってる仲間がいる。一緒に成長できることがすごく楽しい。みんなと会って話すだけでやる気がわいてくるんです。

 震災後、何もできなかった時はやりきれない気持ちでした。でも動き始めて、自分の中に情熱が生まれた。やっと情熱を消化できる場を見つけたと感じています。

【活動情報】ユースみやっこベース

 誇りと地元愛を行動に繋げようと、地域の中で学び・体験の場づくりを行う団体。13年2月の設立から、「高校生サミット」を毎月開催し、市内の高校生を中心にさまざまなテーマで「今私たちにできることは何か」を話し合っている。村上くんは、4月に行った復興をテーマにしたプレゼン大会で優勝したプランを基に、地域の魅力を盛り込んだ「商店街MAP」の作成にも取り組んでいる。
http://miyakkobase.jimdo.com/

メモリアルタイルで震災の学びを継承!

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行動を起こしたきっかけ:アメリカで学んだリーダーシップ

 宮古市の田老地区には、万里の長城とも言われ有名だったスーパー堤防がありました。大丈夫って思った多くの方が犠牲になり、中には助けに戻った介護のヘルパーさんもいて。「なんで人のために動いた人までも」って、本当に辛かったです。その思いが行動へとつながったきっかけは、夏に参加した「TOMODACHIサマー2013リーダーシッププログラム」です。他の被災地の近い悩みを抱える仲間と出会い、地域貢献やリーダーシップについて学びました。他の参加者もそれぞれが行動を始め、私も具体的なアイディアに出会い、動き出しました。

エネルギーの源:昔からの「世界を変えたい」という思い

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 恥ずかしいんですけど、中学生の頃から「世界を変えたい」って思っていました。どう変えたいかと言うと、お金持ちとかだけじゃなくて、一般の人でもいい考えやいい想いを持ってる人がいれば、その価値観をもっと共有できる世の中になったらいいと思うんです。でも、そのためにやりたいこと、すべきことが決まってなかった。今、何か打ち込めるものを見つけてすごく興奮してます。あたしみたいな人でも何かできるんだって、見せたいんです。

行動してみて:動いたら、一つひとつ前に進んで行く

 一番感じているのは「やればできる!」ということです。先頭に立って、遠慮しないで(図々しく)発言していったら、失敗もあるけど、一つひとつ前進していくんです。震災後、私たちに対して日本各地、そして世界から手を差し伸べてもらえているこの境遇は、与えられたチャンスなんだ。絶対に成功させなくちゃ、という思いが強くなりました。私が負けてしまったら田老を取り戻せない、そういう気持ちで、これからもどんどん発信していきます!

【活動情報】「津波被害のメモリアル化と学びの継承」プロジェクト

 宮古市田老では、過去の明治三陸地震、昭和三陸地震の被災経験がありながらも、東日本大震災でも185人の犠牲者が出てしまった。これを繰り返さないために、津波被害を、商店街などの歩道(タイル)に刻みメモリアル化することにより、津波被害の学習を行うプロジェクト。今後の震災学習や観光の一環として、そのタイルを辿り、街歩き(めぐり)などで活性ブランド化も検討中。

インターネット番組で石巻を発信!

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行動を起こしたきっかけ:たった30分の生む温度差

 石巻の学校に通ってるんですが、僕の家は隣町の涌谷にあります。震災が起きて最初の1ヶ月、30分先では大変なことが起きてるのに、涌谷には全然情報がはいってこなかった。すごい温度差を感じたし、「伝える」ということの大切さを痛感しました。そういう思いがあった時に、仙台で大学生たちが自分たちの番組をつくってustreamで配信しているプロジェクトに出会いました。そこに通わせてもらった中で、その大学生の活動を支援していたメディアージという団体の方から「君たちもやってみる?」と言ってもらったのがきっかけです。

エネルギーの源:仲間とともにつくりあげる喜び

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 続けて行くのは本当に大変です。でも続けられてるいのは、仲間と一緒に何かをつくりあげるという喜びがあるからです。こないだは番組を見てくれている広島の高校生から連絡をもらって、彼らのやっている番組にビデオレターを送ったこともありました。こういう経験を仲間と共有できるのは本当に嬉しいです。あとは、南三陸町で語り部団体「まずもって」を立ち上げた田畑さんからの刺激も大きいです。全力で向かわなきゃ駄目だって、教えてもらいました。

行動してみて:続けられるかは、結局は自分との戦い

 自分はリーダーだったので、みんなをまとめていかなければいけなかった。でもうまくできなくて、何度もヘコんで。辞めてしまう人もいたし、「言い訳をしている」と言われたこともありました。すごく辛かったけど、毎回仲間やまわりの人たちに支えてもらいながら続けられました。いまは、少しですが自分に強くなれたのではと思えます。続けられるかは結局は熱意の差であり、自分との戦いなんだと思っています。

【活動情報】くじらステーション宮城県石巻市

 ライブ動画配信サイト「Ustream」で、インターネット番組を配信する高校生グループ。13年6月から6名でスタートし、現在は石巻の高校生有志に中学生も加わった約10名で活動している。60分の番組を月に2回放送するにあたり、企画、取材、番組準備、配信などすべて自分たちで行う。放送ではメンバーがマイクの前に座り、石巻の町の魅力と、石巻の高校生が復興に向かい何を考えているかという生の声、10代のエネルギーを全国に届けている。
https://www.facebook.com/Kujirastation

農地を活用して町に人を呼び込む!

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行動を起こしたきっかけ:何もできなかったとずっと残っていた

 震災当時は中学生でした。自分が住んでいるところよりも被害を受けている所があるので、従兄弟と一緒にがれき処理の手伝いに行こうとしていたんです。でも数日後、遺体があったり大変だから来ない方がいいとなって結局行けなかった。何もできなかったという思いがずーっと残っていたんです。今年に入って何かしたいと仮設住宅をまわってみたりもしたんですが、自分でできることは見つかりませんでした。そんな時に農家の白石さんと出会いました。風評被害の大変さを聞いてショックでした。それと、心に残ったのは32歳の白石さんが「自分が最年少」と何度も言っていたことです。若者が少ないという福島の農業の未来を思った時、農業の復興に力になりたいと思ったんです。

エネルギーの源:周りの人たちからの刺激

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 正直、行動する中で大変なことは沢山あります。何かやろうとした時に人が集まらないことも。それでもやっていく中で、大人の人たちが「俺たちも頑張らなきゃな」って言ってくれたりすると、力になります。それと、他地域の高校生の頑張りも刺激になっています。周りも頑張ってるんだから、僕たちもやらなきゃって。凄いことはできなくても、とにかく行動しようと思っています。

行動してみて:大人の人たちへの感謝でいっぱいです

 もう、感謝しかありません。やろう、って決めて仲間で話し合って動き出してから、本当に多くの大人の人たちに助けて頂いています。話し合いの場に参加させてもらったり、農地を貸してもらったり、まだ何もできてないのに。大人の人たちとのやりとりを通じて、会話が理解できたり意見を言えるようになったりと少しずつですが成長も感じてます。小さくても行動を重ねて恩返しができればと思っています。

【活動情報】TOMODACHIファーム 

 いわき市にある農地を活用して、いわきの魅力発信や、耕作放棄地の活用を行うプロジェクト。風評被害と戦う地域の農家の力になりたいと、農家のお手伝いから活動を開始。市内の復興飲食店街「夜明け市場」におけるイベント集客なども行った。また農地を提供してもらい、宣伝を通して外部の人を呼び込み農業体験をしてもらうための企画を推進している。

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