震災以降、PwCは被災自治体や復興活動を行う団体に対しコンサルティング面で支援を続けてきた。現地に社員を複数名派遣しながら活動を継続する中で、資金調達や事業計画の策定などにおけるサポート、また東北内外からの支援や企画のマッチングコーディネートのニーズを痛感。多方面からの支援要請や2年超の支援活動で培ったネットワークを踏まえ、それまでの無償のプロボノ活動からサービス化し、より本格的に取り組むために部署をつくった。
東北のビジネスにおいて、「必要な視点は、革新的なビジネスモデルの構築」と室長の野口氏。「現在の東北に多いのはインフラ復旧の事業と、スマートシティや大型再生可能エネルギーなど『革新的な技術』に関する検証事業。だが将来性や収益性、差別化などの観点から総合的に見ると、既存の事業において『革新的なビジネスモデル』を構築することに最もビジネスチャンスがある」と指摘する。例としてあげるのは、ITを活用したイチゴの水耕栽培や、製造・卸会社による米の全国販売。農業という既存のビジネスの種だが、製造や流通、マーケティング面で以前とは違う形で行いビジネスを拡大している。
PwCが主に焦点を当てる分野は、世界的な問題でもある医療、食糧、再生エネルギー。今後3年で20件以上のビジネスモデル構築支援と5件以上の教育分野のプログラム企画を目標とする。
これからはNPOの時代社会性にビジネス視点を
支援先は自治体や企業、教育団体など多岐にわたるが、重点的に取り組むのはNPO等のソーシャルセクターだ。その理由として「これからはNPOの時代」と野口氏は言う。「今後はNPO等が行う社会的ビジネスは間違いなく成長分野だが、まだ日本においてコンサルティング会社の支援事例は少ない。今回の取り組みは、この分野における市場創造という側面、自社の将来のビジネス領域拡大のための『投資』という側面もあるのです」。
NPOが持つ社会性起点のアイディアをコンサルティング面から捉え、革新的なビジネスモデル構築、そしてビジネスの成功に導く。これを繰り返すことで多くのNPOの継続性を担保し、復興の推進を目指す。東北イノベーション推進室はプロジェクトに応じて各分野の専門家を配置する形で約10名の体制を組むが、時には専門分野を離れて現場のオペレーションにも加わるといった「踏み込んだ」支援を行うことも辞さない考えだ。
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