岩手県大船渡市 沿岸部初 公設民営型支援センター開所

市民の力を結集して復興のまちづくりをめざす

2月に行われた開所式に集合した関係者。

2月に行われた開所式に集合した関係者。

岩手県大船渡市で2014年2月、沿岸部では初となる公設民営の常設型NPO支援センターである「大船渡市市民活動支援センター」が開所した。地域のNPOや市民団体、企業、行政がセクターを超えて情報を共有。ネットワークを築くことで地域活動を活性化し、市民参加による復興のまちづくり促進を目指して生まれた場だ。

震災前後、地域内外の市民活動をつなぐ

同センターの大きな特徴は、官民含めた複数の主体が協働で運営に当たっていることだ。大船渡市で活動する3つのNPOと市の社会福祉協議会、そして大船渡市の5者が2013年9月に市民活動支援協議会を設立。仮設商店街「おおふなと夢商店街」の一角に支援センターを仮オープン。4ヶ月の試験運用の後、市街地の商業施設内に拠点を移して本格始動となった。

協議会を構成する3つのNPOのうち、「夢ネット大船渡」は2006年から地域おこしや中間支援活動を続け、地域では実績のある団体。被災した方に食事を提供する「さんさんの会」と、復興支援に県外から駆けつけたメンバーで構成される「みちのくふる里ネットワーク」は、震災後に生まれた新しい団体だ。3団体が入ることで震災の前と後、そして地域の内と外のリソースを結ぶことを目指している。

外部支援が途絶えた後に試される地域力

支援センターの主な事業は、市民活動団体のネットワーク構築、情報の見える化、相談窓口対応、交流・協働サポート、スキルアップ支援の5つ。協議会の代表を務める大関輝一さん(みちのくふる里ネットワーク代表)は「開所後、市民や地域の団体から早くも問い合わせや相談が持ち込まれている。まずまずの滑り出し」と語る。

現在は市内の市民団体などへのヒアリングを進めている。以前から自治会や婦人会、子供会などの地域活動があるが、震災を機に、新たに団体が生まれ、また市外・県外からも多くのNPOなどが支援に入った。だが法人格を取得していない団体まで含めると、現状を把握することは市でも難しい状況。ネットワーク構築事業の土台とするためにも、各団体へのヒアリングを元にしたデータベースづくりが急務だ。

来年度からは大船渡市の広報誌のうち毎月1ページを支援センターで受け持ち、市民団体の活動紹介や支援センターからのPRに活用する。市としても、市民の声を取り上げる方法を模索していたが、協議会で定期的に交流する中で、広報誌の委託という具体的な協働の形が生まれた。大関さんは、「自分が使える支援情報がどこで得られるのか分かりにくい。住民全員に届けられる広報誌をうまく活用したい」と期待する。こうした情報発信の連携がスムーズに動き出せるのも、官民協働事業ならではのことだ。

大船渡に限ったことではないが、外部から支援に入った団体は少しずつ姿を消しつつあり、人・モノ・カネのあらゆる面での支援が縮小していくことが課題となる。大関さんは、「これまでは、国や県などの公的支援のほか、県外からも多くの援助があり、被災地の活動はいわばゲタを履かせてもらっていた状態。これから各地域の真の実力が試される」と気を引き締めている。

公設民営による支援の仕組みは被災地における新しい市民活動のフレームづくりにどのような力を発揮できるのか。多くの支援団体が生まれた東北の今後のまちづくりを占う上でも、大船渡市市民活動支援センターの活動は試金石となるだろう。

文/小島和子

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