インタビュー先:藤沢 烈さん
一般社団法人RCF復興支援チーム代表理事
震災から3年
東北はシリコンバレーと並び世界的な成長地域になる
インフラ整備は概ね順調。これから住まいの移行が本格化
Q.間もなく震災から3年です。現状をどう見ていますか?
復興はどこまで進んだのか、これからどうなっていくのかを、いくつかの数字を追いながら説明していきたい。
まず、復興庁の資料によれば、がれきの撤去に関して、3月末で岩手県と宮城県では処理を100%終える見込みだ。復興予算の多くが投下されてきた事業であり、この3年で終わったことの大きな1つと言える。残る福島県も、あと1年で終了する見込みで、がれき以外の公共インフラの復旧も概ね計画通りに進んでいる。
続いて被災された方の最大の関心事である住宅、そしてまちづくりについて。用地取得の交渉や整備計画の策定に多くの時間が費やされた3年間だったが、いよいよこれからの1〜2年で本格化する。現時点では完成した復興住宅は約1〜2割だが、今後1年で約5割が、さらに1年で9割方が完成する見込みだ。高台移転や土地区画整理といった民間住宅用地の整備も2年間で5〜6割が完了する見込みで、現在仮設住宅に住む約10万人の方々の、住まいの移行が始まる。沿岸部の更地のままの町を見て「復興が進んでいない」という印象を持つ人もいるが、これからの2年間で大きく変化していくための下準備の期間だったと捉えるべきだろう。
最後に産業面は、厳しい状況だ。被災した沿岸部の主要産業である水産・食品加工業について見ると、加工施設自体の復旧は78%まで来たのに対し、震災前の水準に売上が回復しているのは14%に留まる。ハード面の復旧に目処がつき、これからはいかに商品の付加価値を高め、消費者が求めるものを売っていけるかが問われていく。
支援側が連携してのコミュニティサポートを
Q.住まいの移行では何が起き、どのような取り組みが必要になりますか?
仮設住宅と復興住宅の二つのコミュニティ形成に向けた支援が必要だ。まず仮設住宅だが、全員が一度に今の住まいから移行されるわけではないので、経済力のある人から仮設住宅を出て行く傾向がある。特にコミュニティをとりまとめてきた自治会長から仮設住宅を出ていく傾向があり、コミュニティが劣化していくことも想像される。このように単純な数の減少だけでなく、コミュニティの質も変わる中で、いかに仮設住宅に残る人たちのケアをしていくかが課題となる。
対応としては、行政やNPO、社協などが連携して自治会を支える仕組みづくりが必要だ。この3年間で仮設住宅内のコミュニティが形成され各地で役割分担がされてきたが、今後の変化においては個々の努力だけでは難しいことも出てくるだろう。個々の自治会の変化する状況などの情報を共有しながら、支援側にもより一層の連携が求められる。
Q.移行先である復興住宅ではどうでしょう?
復興住宅のコミュニティ形成は、入居するまでが勝負と言われている。復興住宅は場所の利便性などに差があるため抽選で入居が決まり、元のコミュニティ単位での移行は難しい。地域の自治会や社協で入居前の懇談会を企画するなど、受入れ側で工夫をしながら顔の見える関係をつくっていくことが必要だ。
一方で入居が募集定数に満たない復興住宅も出てきている。仮設住宅内で既に形成されたコミュニティもあり、コミュニティ毎に移動するインセンティブをつくらないと仮設住宅に人が残り続けてしまうことも懸念される。仮設住宅を強制的に打ち切るような形ではなく、民間の知恵を活用しながら移行先の新たなコミュニティをつくっていく解決策が、住まいの再建を進めていくだろう。
また阪神大震災では、復興住宅への入居後5年程度から自治会が機能しなくなったと言われている。自治会機能も高齢化を考えると継続が難しくなるため、それを支える地域のNPOなどの専門組織と共にハイブリッド型のコミュニティづくりが必要となる。支援側としては、移行直後は自治会の立ち上げを支援しつつ、その後は5年先10年先を見据えて、自治会を支えるNPO組織を育成していくことが求められるだろう。
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