【Leaders Interview】<震災から3年>東北はシリコンバレーと並び世界的な成長地域になる【後編】

ビジョンを持って産業構造の変革を

Q.産業の本格復興へ向けて、どのようなことが必要でしょう?

一般社団法人RCF復興支援チーム 藤沢 烈代表理事今の状況は悪循環がおきていると言える。付加価値の高い商品をつくれないため利益が生むことができず、高い人件費を払えず良い人が確保できない。無理矢理雇用を拡大するというよりも、いかにして付加価値の高い商品をつくり、ポジティブな循環を生み出せるかが焦点となる。

産業面の支援においては、復興庁の行っている「新しい東北」事業や、ヤフーやオイシックスの進める「三陸フィッシャーマンズプロジェクト」など様々な取り組みが行われてきた。ただしこれらはあくまでツールに過ぎない。最も重要なのは、現地経営者のビジョンであり、意識の変革だ。東北沿岸は旧来より下請けの産業構造だったが、言われたものをつくるだけでなく、誰にいくらで売るかを考える販売戦略が必要だ。自ら「値付けをする」ことでいかに守りから攻めへのビジネスに変革させていけるかが問われている。そうすることで、上述した支援側の取り組みが更に活きてくるのだ。

Q.産業構造は震災前からのものですが、その変革はどう実現できますか

地元の方々の意識改革を支える、外部の優秀な人材が必要だ。そのためにも、東北の位置づけを「被災して支援が必要な場所」から「可能性があるから関わりたい場所」として発信していくべきだと考える。

実際、今東北は世界的に注目の高い地域だ。国連の視察団やハーバードビジネススクールが2014年に入っても東北に注目しているのは偶然ではない。何故注目されるのかというと、先進国の中で大きな変化が生まれているのが東北だけだからだ。成長著しい新興国は数多くあるが、その成長がいずれ止まることは目に見えている。これから成熟した先進国がどう変革していくのかが世界的なテーマだが、世界中を見渡してもここまでの変化を経験しているのは東北とシリコンバレーくらいではないだろうか。産業面に限らず、行政や社会のあり方において変化のポテンシャルがあり、世界的にも有数の場所が東北なのだ。

行政、企業の変化にNPOは追いついて応えていくべきだ

Q.この3年で起きた、社会的な変化はいかがでしょう?

行政、企業、NPO、それぞれのプレイヤーの考えや位置づけから変化を整理したい。

【行政】 行政は震災により、単体で公共を担っていくことが困難であり、企業やNPOと連携する必要性に気付いたと言える。つまり閉じた行政から開かれた行政へと変化した。以前は行政の委託先として下請け的な位置づけだったNPOに対しても、事業企画の段階から話を聞いてくれるようになった。例えば我々RCFでは岩手県釜石市や福島県双葉町の中に入って、復興支援員制度の活用に向けた仕組みづくりやコミュニティ支援に関する議論からご一緒させてもらっている。

こうした連携の中で、縦割りが指摘される行政においても旧来からの役割意識を変化させようとする柔軟な姿勢が見られるようになった。震災を機に明確な意識変化が起きていると感じる。

【企業】 企業は、社会をつくる一員であるという想いをより強くしている。有名な経営者が寄付などの大きな支援を決定したと報道されることもあるが、実は経営者の決断を支えた従業員や株主の存在を忘れてはいけない。東北に対して熱意を持った企業社員たちが、時には復興に携われなかったら退社を辞さないくらいの気概を見せながら、各地で復興支援活動を牽引した事例は多い。また株主の社会意識も高まっている。ヤマト運輸が宅急便1個につき10円、総額140億円を超える寄付を行うと発表した際、株主総会で割れんばかりの拍手が起きたと言う事例が象徴的だ。社会貢献に積極的なアメリカのように、企業が社会を支えるために一定のコストをはらうという認識を、日本でも株主自身が持ち始めている。

【NPO】 こうした行政や企業の変化に対応してその役割を大きくしているのがNPOだ。この3年で数多くのNPOが復興支援に携わってきたが、ボランティア型から、組織型経営へと変化するNPOの存在を感じる。企業が社会的事業を行う上では、当然説明責任を果たす必要があり、その一端を担うNPOにも自ずと、企業と同等以上のマネジメントを用いて、目標設定から実行・検証を行うことが求められてきている。営利vs非営利といった構造ではなく、企業とNPOが高いレベルのマネジメントを持って対等なパートナーシップを組んでいく事例がいくつも出てきている。

しかし、行政や企業の変化に対してNPOはもっとスピードを持って対応していかなくてはならないとも感じている。今後、NPOはその役割が更に大きくなっていくことを確信している。ますますマネジメント力の強化が必要であり、我々RCFも人員を拡大させながらさらに復興にコミットしていく考えだ。

【一般社団法人RCF復興支援チーム 藤沢 烈代表理事 プロフィール】
一橋大学卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て独立。NPO・社会事業等に特化したコンサルティング会社を経営。東日本大震災後、RCF復興支援チームを設立し、情報分析や事業創造に取り組む。文部科学省教育復興支援員も兼務。共著に「ニッポンのジレンマ ぼくらの日本改造論」(朝日新聞出版)、『「統治」を創造する 新しい公共/オープンガバメント/リーク社会』(春秋社)。

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