週末、多彩なゲストと参加者が集結
2014年4月12日(土)、桜前線が東北地方を北上する頃、二度目の桜前線が東京TBWA\HAKUHODO\QUANTUM(東京・芝浦)にやってきた。その名も「さくらハッカソン2014」。富士通株式会社(東京・汐留)が運営するメディア「あしたのコミュニティーラボ(あしたラボ)」が主催する、東北復興のシンボルである「さくら」をテーマにした、東北地方に人を呼び込むためのアイデアやサービスをつくるためのイベントだ。
エンジニアリングやデザインなど、さまざまな得意分野を持つ37名の参加者が8チームに分かれ、2日間に渡って「アイデアソン(特定のテーマについて多様な人が集まりアイデアを出し合う)」と「ハッカソン(アイデアをもとに、サービスやソフトウェアをつくり上げる)」を通じた成果を、動画と資料で発表する。参加チームのアイデアは、桜をシンボルに東北地域の活性化に取り組む「東北・夢の桜街道推進協議会」での紹介も視野に入れている。同協議会には、国土交通省や自治体、地元の交通・運輸等の企業が参加している。
イベントは、総合モデレーター佐々木哲也氏(株式会社富士通総研)の「東日本大震災から3年たった今、さくらハッカソンをきっかけに地域活性化のアイデアを全国へ拡げていこう」というかけ声からスタート。続いて、宮坂不二生氏(東北・夢の桜街道協議会推進協議会事務局長)から協議会の立ち上げや運営に対する思いを述べたスピーチがあり、牛島晃氏(株式会社ジェイアール東日本企画ソーシャルビジネス開発局イノベーション開発部地域連携担当部長)、江沢伸一氏(株式会社はとバス 観光バス事業本部定期観光部副部長)、江渡浩一郎氏(メディアアーティスト/ニコニコ学会β実行委員長)から、ハッカソンの手がかりとなるキーワードや、参加者に向けての期待など、熱いメッセージを受けた。
個人のアイデアをみんなで最大化していく「アイデアソン」
石井力重氏(アイデアプラント代表)がモデレーターを務めた初日のアイデアソンでは、「Praise First(良いところを尊重)」というモットーのもと、多彩なプログラムで活発な意見交換が行われた。初対面の参加者も多かったが、次第に打ち解け、石井氏のモデレーションに笑い声がもれる場面も多かった。今回のハッカソンは、ARをはじめとする富士通の最新技術のほか、ゲッティイメージズジャパン株式会社やユカイ工学株式会社などが、画像素材やプロトタイピングツールなどさまざまな技術を提供。憧れの最新技術を眺める参加者の眼差しも熱かった。
アイデアの実現に向けて、白熱した「ハッカソン」
13日(日)のハッカソンでは、山寺純氏(株式会社Eyes, JAPAN代表取締役社長)がモデレーターを務めた。「企業に欲しいと思われるような自分達の価値を打ち出して欲しい」という挨拶からプログラムが始まると、各参加者とも前日とは打って変わって真剣な表情に。チームで頭を寄せ合いツールを組み合わせたり、ソースコードを打ち込みながらアイデアを形にする。発表時間が近づくにつれ、場の緊張感は高まり、参加者たちの動きをさらに加速させていった。
迎えた発表時間、アイデアの先進性はさるものの、プロジェクションマッピングやウェアラブル端末など、さまざまな最新技術を使った、各グループの個性が光る成果物が出揃った。たとえば、東京と東北の居酒屋をマッチングして居酒屋での楽しみ方を増やすサービス、東北の桜の木と子どもの成長を結びつけて観光客の誘致を促進するサービス、家のお風呂で東北の桜のプロジェクションマッピングを行い、家にいながら離れた東北への関心を自然と高められるサービスなど――。それぞれの世界観が散りばめられた成果物の数々に、審査員も真剣な表情を見せていた。
厳正なる審査の結果、最優秀(さくら)賞には、東北を自転車で旅する若者を起点に地域とのつながりを促進するソーシャルコミニュケーションプラットフォームを打ち出した、羽生JAPAN with BAチーム「TOHOKU BICYCLE MAP」(参加者賞もダブル受賞)、Geek賞は、林家チームの「桜・風゜呂ジェクション・パック」、Big Picture賞は、桜これくしょんチームの「MY SAKURA COLLECTION」が選ばれた。
これらの成果物が、「東北・夢の桜街道推進協議会」でどのような反応を得られるのか、注目されるところだ。
「さくら」は、東北復興のシンボルであり、日本人の感性を象徴する「心のよりどころ」のようなもの。ハッカソンで生まれたアイデアが、東北地域の魅力をこれまで以上に増す、新しい「さくら」を咲かせることを期待したい。
文/片岡枝里花
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