【高台移転】市町村復興計画出揃う 住民との合意形成に課題

NPOや民間団体との連携で円滑化を

高台移転の流れ(市町村)

「防災集団移転促進事業」(国土交通省)より作成

昨年末の岩手県大槌町を最後に被災市町村の復興計画が出揃った。沿岸部市町村の多くが「検討する」と明記した居住区の高台移転の進展に、注目が集まっている。

資金面においては、政府は全額国庫負担を決め、地方自治体の高台移転実現に向けた支援を打ち出した。具体的には「防災集団移転促進事業」において「復興計画を策定し、それを集団移転する被災者と合意形成した上で復興交付金を交付する」というガイドラインを示した。

だが、実際には合意形成が難航しているケースが多い現状だ。沿岸部の主要産業である漁業従事者の職住分離、移転に伴う経済的な負担、新興住宅と地元民とのコミュニティ形成地域への愛着など気持ちの問題が指摘される。他にも移転先の適地不足の問題や、移転先予定地によってはゼロから社会インフラを設備しなくてはならないという時間とコストの問題、地域によっては全戸移転にかかる費用面の問題もある。

課題が多い中ではあるが、合意形成を少しでも円滑に進めるためには、復興計画策定の段階から行政側と現地の住民がしっかりと協議することは不可欠だ。そのために各地域では1ヶ月ごとに説明会や相談会が開かれている。多くの自治体でマンパワー不足が問題となっているとはいえ、こうした努力を継続していく必要があるだろう。

そんな中、少数だが岩手県野田村や釜石市唐丹町花露辺(けろべ)地区など、住民の合意を得て計画を進めている地区も出てきている。釜石市は国への交付金申請に先駆けて、市の財源で高台移転で必要となる2億2700万円をすでに年度内予算で用意し、年度内にも着手する方針だ。

民間団体との連携による取組みも出てきている。岩手県山田町では計画策定を外部に委託しており、宮城県女川町の竹浦地区では住民主導で都市計画コンサルティング会社を巻き込んでの協議も開始している。また、地元のNPO等の中には、住民と密接な信頼関係を築いてきた団体も少なくない。そのような団体と協働することで、住民の声のすい上げや合意形成がより円滑化されることに期待したい。

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