外部の力を有効に活用
現在、「なこそ復興プロジェクト」のメンバーは約30人。NPOとして多い方だが、全員が本業を持つボランティア参加であり、数多くのプロジェクトを立ち上げ推進するには手が足りなくなる事もある。そんな中、彼らが外部の人と上手く連携している所は見逃せない。
例えば4月に立ち上げたボランティアセンターは、震災直後に支援の声を挙げてくれたと言う山口県宇部市、および国際NGOシャプラニールの協力を得て立ち上げたもの。今回のように前例のない緊急時、行政が動けない時期にもスピード感を持って決断ができる、民間団体ならではの強みを活かした事例だ。また現在取り組んでいる「復興公園」のプロジェクトは、勿来出身の副学長と新たにつながった東京藝術大学のバックアップの元に進めている。「復興公園は、各地に数多く作れば良いという物ではない。世界に通用するコンセプトと付加価値を持ったものにするためのグランドデザインが必要」との認識から藝大に協力を要請した。
いずれの例も、状況に応じて組織のビジョンを明確にし、それを元にスピーディな意思決定を行ったため、縁を形にすることに成功しているといえるだろう。
行政との関係構築力
「勿来まちづくりサポートセンター」についてもう1つ特筆すべきことは、地元行政との関係性。
前身となっている「勿来ひと・まち未来会議」は、都市計画法の改正にともない行政がより住民の意見を吸い上げようという流れの中でできた組織だが、その頃から「行政と住民の対等な関係」を意識し続けてきたと言う。例えば、それまで行政との会議はいわき市の中心地にある役所まで勿来から出向くのが当然だった。しかし「勿来のお話をするのだから、勿来でやりませんか」と、市の担当者が勿来を訪ねる文化に変わった。
また前述の「復興公園」においては、まだ構想段階で管理元の土木事務所にかけあい、まずは崩れた防潮堤の保全の了解をとりつけるところから開始している。その上で綿密に計画を進め、今年1月には市の都市計画課および福島県へ直接提案するまでに至っているという。推進の是非についてはまだ調整段階とのことだが、この民間主導のまちづくりプロジェクト、今後の進展を見守りたい。
市民を巻き込むムードづくり
まちづくりに関わる地域のNPOとしてここまで挙げてきたポイントは①変化への対応、②ビジョンと現場力、③外部連携、④行政連携、の4点に整理できる。そしてもう1つあるとするならば、⑤参加者を巻き込むコミュニティづくり。サステナブルな組織運営に欠かせない地域住民の活動への参加、特に若い人達のそれだろう。「勿来まちづくりサポートセンター」のホームページには、老若男女和気あいあいとした写真が並び、若い女性メンバーが等身大の言葉で綴る事務局のブログからも、メンバー同士の信頼関係と、何より「なんだか楽しそう」な雰囲気がにじみ出ている。
活動への参加理由を、市役所に勤めながら一住民として参加している高木洋平さんに聞いてみた。「メンバーたちの大変そうだけど楽しそうな雰囲気に惹かれました。お金にならなくても、楽しみながらまちの未来のために努力する、そんな輪に自分も入りたいと思ったんです」。そしてこうした雰囲気を作っているのは、代表の舘さんの人柄と存在が大きいという。舘さんは「大切なのは、次の世代の人をどう育てるかという視点。プロジェクト運営や決裁権について、どんどん若い人達に任せるようにしています」と言う。若者が参加したいと思える雰囲気ややりがいは、この彼の哲学からきているものかもしれない。
まちづくりは市民だけでも、行政だけでも行える時代ではなくなり、今や協働作業としてお互いの責任と立場を理解し合い、議論を重ね、実現方法を検討していく必要がある。勿来に見たまちづくりNPOの可能性が、地域の輝ける復興につながるものと期待したい。
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